日曜コラム#2 スポーツから学ぶー剣道2017-06-25

先週のコラムでは、テニスを取り上げましたが、
今週は、剣道を通じてのスポーツの効用を考えてみたいと思います。

剣道は、日本固有のスポーツですが、柔道ほど世界に広がってはいません。
その人口は全日本剣道連盟の2014年の資料ですが、177万人だそうで、
なんと柔道人口の10倍とあります。

日本古来の武士の精神といった根本理念が、幼少の子どもを持つ親を
動かして、ボランティア組織である剣友会や個人が経営する
道場への加入を促すのでしょう。
剣道は、他のスポーツに比較して練習開始から終了まで
礼を重視する作法がその大きな特徴といえるでしょう。
大人も子どももお互いに相手に礼を尽くすその姿勢は、清々しいものです。

剣道がオリンピックに採用されない理由の一つとして、
試合における勝ち負けの判定基準のあいまいさがあるのではないかと思います。
剣道の頂点試合は、毎年文化の日(11月3日)に日本武道館で行われる
日本選手権ですが、3本勝負(2本先取した方が勝ち)の試合、
3人の審判員により判定されますが、審判の判定はほぼ絶対です。
録画判定、選手によるチャレンジシステムはありません。

西洋剣道のフェンシングが、人為でなく機械による判定になり、
先に当たったことが、ポイントの基準となっているのに対して、
日本剣道は、単に当たったことだけではポイントにならない場合も多くあり、
残心といってポイントを取った後のスタイルが大いに重要です。

西洋剣道はすでに、スポーツに特化して発展しているように思います。
すなわち、剣でもって相手と倒すということとは関係ありません。
しかしながら、剣道は、試合においても、面(脳天)、小手(右手首)、
胴(左右の脇腹)、突き(喉元)に竹刀が当っても、
その後の姿勢とセットにならないと一本というポイントを取れません。

形から入り、形に終わる剣道には、初段から八段までの段位が
ありますが、昇段のための試験は、勝ち負けでは決まりません。
相手と対峙する時から、礼をして試合の場から去るまでの
すべての動作が審査の対象となります。
相手に勝つような一本がなくても、構え、打つタイミング、
打った後の姿勢、気迫のこもった発声などが、適切であれば、
7名の審査員は昇段可とする判断をします。

剣道においては、その基本のスタイルに個性は不要にように思います。
むしろ、標準になるべく近づけるように、稽古の度に修正していく。
その繰り返しを続けられる忍耐がこのスポーツには求められるように思います。
つづく

アメリカの教育文化と日本の教育文化2017-06-24

ハーバード大学の入試プロセスは、そのまま高校そして中学のボーディングスクール入試プロセスと一致します。その要点をまとめます。

① 成績、学力試験、学校生活での実績などの総合評価による合否判定
② 学校主催の試験がない
③ 志望の動機と入学後の目標が重視される
④ 面接も重要
⑤ 受験前最終学年のみの追い込み学習はほぼ無理

年に1回の試験の結果で合否が決まる日本の入試制度のほうが、アメリカに比べてシンプルであり、受ける側にすれば学習目標や範囲を設定しやすく短期での集中準備が可能です。
その反面、覚えることに重点が置かれるため、教育が本来目指す人格形成や社会的責任ということよりも点数を上げるという矮小でしかも競争原理のなかに若者たちを閉じ込めてしまうという欠点もあります。
もちろん、若者は受験的価値観で一生涯を生きるわけではなく、その時期を通り越せば暗記作業から解放されます。

暗記を重視せず、あくまでも受験者の考え方や特徴、個性を重んじるアメリカの教育文化は、かれらの社会の在り方を反映しているともいえます。
アメリカ社会は日本に比べて、学歴を重視しないとも言われていますが、それは学歴ではなく、学閥ではないかと思います。すなわち、どこの大学を出ようが、問題はその人が何をできるかであり、大学ごとに徒党を組むということには意味がないとアメリカでは考えられているのではないかと思います。
ハーバード大学を出たということは、それなりの能力を期待されているわけであり、それに見合った仕事ができなければ、その個人は能力がないとみなされます。

アメリカでは、学歴が上がれば上がるほど、学習の内容が高度になり、実用に即したものになっていきます。そのためには、高度な読解力と自己表現力が求められます。それゆえにリベラルアートという広範囲な教養を身に着け、読み書きを鍛えることが、中等教育、そして高等教育前期の学習の中心になるのではないかと思います。

日本では、大学入試をピークにして、学習の質と量が劇的に変化します。大学生のアルバイト、サークル活動などは、入試から解放された学生たちの次の段階の社会学習として有効に機能しているのかもしれません。一般教養と呼ばれる2年間の大人数、講義形式の授業から何を学ぶかを疑問に思っている学生たちは少なくないと思います。

日本の文化でもある組織への強い帰属意識から個人と組織の対等な関係にバランスよくシフトしてけるように、少しばかりの協力ができればと思います。

#2 ハーバード大学に入学するには2017-06-23

<前日のブログに続きます>
ハーバード大学がそこで学ぶ学生たちに求めているのは、人生のビジョンではないかと思います。

「あなたはハーバード大学で何を学びたいのですか」という問いにどれだけ納得のできる回答ができるかというのが、合格の鍵になるのではないかと思います。

中学、高校時代の学業成績、そしてSAT試験の結果だけでは、世界中からやって来る志願者たちを判断できるわけがありません。なぜならば、学業成績はほぼストレートA、SAT試験の結果はみな満点に近い点数だからです。
学業成績のみで、志願者の合否を決めることが、いかに空しく、判定要素が貧弱であるか、ハーバード大学の入試担当者は十分に心得ていることでしょう。

それ故に、この大学では、志願者の大学入学のこころざしや人生観といった生き方が重視されるように思います。

日本の大学入試と比較すると、あまりにも合否の基準が曖昧としていて、受験対策といっても、何をどのように取り組めばいいのか、掴みどころが明確ではありません。すなわち、知っていることの量を徹底的に増やすことが合格に直結するのもではないのです。

高校での学校生活はそこそこに、予備校、塾、家庭教師など、学校外の試験対策に徹底すれば、1~2年で合格も見えてくる日本の大学入試とちがい、ハーバード大学に入学するためには、高校生活そのものが問われ、さらには、志願者独自の出願の根拠とその展開、展望を文章と口頭で筋道を立てて説明できなければいけません。
四の五の言わずに受験勉強というわけにはいきません。そもそも、学校生活そのものが受験勉強に組み込まれていて、自らの個性や特性を徹底して分析してそれを発展的に説明するといういわば社会的作業が入試のプロセスの重要部分を占めます。

対策というよりも志願者の本音を引き出したい、それがハーバード大学の切なるおもいなのではないでしょうか。もちろん、ハーバード大学だけではなく、他のアイビーリーグ校、さらにはリトルアイビーと呼ばれる小規模リベラルアーツ系大学群、そして、ボーディングスクールでさえも、このようなコンセプトで学校運営がなされていると言えると思います。

ハーバード大学に入学するには2017-06-22

世界のトップレベルにあるハーバード大学ですが、この大学に入学するために求められるのは、何かを総合的に考えてみたいと思います。基本データを下記に示します。

ハーバード大学
授業料:約540万円 寮費 :約150万円
総学生数:約22000人(32%学部生、68%大学院生)
学部留学生16%(カナダ、中国、韓国等)
出願者の平均SATスコア2250(2400点満点)
留学生出願者の平均TOEFLスコア 110(満点120)
留学生合格率 5.8%
高校時の平均成績4.8(1~5段階評価)

ノーベル賞受賞者:累計150名以上
3000以上の履修科目数
編入率0.1%

注目専攻
経済、政治、社会、物理、化学

出願書類について
願書(オンライン)
中学、高校の成績証明書
Personal Essay
Supplement Essay
推薦状2~3通
SAT/教科別SAT
財政証明書
面接

在学生の7割弱が大学院生というこの大学の学生構成を意外に思われる人も多いと思います。また、上記の基本情報には記載がありませんが、アメリカの大学入学のための条件として、学校あるいは学校が認定する入学試験はありません。
SATは、国語力、数学力、文書力を基本とし、学部によって、歴史、化学、物理、生物など個別の科目の学力を問うものです。ハーバード大学を受験する学生は、ほぼ満点に近い得点をするため、SATの点数で合否を決定するということはあり得ません。
この学校の出願にはTOEFLスコアは含まれていません。TOEFLによる英語の出来具合ははなから問題にされないということになります。

この学校が求めている人物像について、私の友人でアメリカ大学進学に詳しい西澤めぐみさんにわかりやすくまとめていただきました。

人間力
・人間として成熟度
・性格
・他者への配慮
・自信、ユーモア
・人としての温かさ
・忍耐力

成長、向上心
・自らモチベーションをあげて いくことができるか
・成長と伸びていく可能性率、これからの成長の期待度
将来どんな人となるか? 1年後、5年後、25年後?

リーダーシップ
・何か深く関わっているか
・個人的に、グループ活動など、活動の中でリーダーとして の適正があるか

多様性
・ダイバーシティ
・異文化対応力
・人種、民族

つづく

The National Society of High School Scholarsについて2017-06-21

先日、この9月からボーディングスクールで最終学年を迎えるある生徒のお母さんから、表題の組織から郵便で加入を促すメールが届いたので、解説をしてほしいとの依頼がありました。

この組織は、ノーベル賞を創立したノーベル家の一員であるClacs Nobel氏によって設立されたそうですが、その目的は、大学進学への奨学金給付、会員のためのリーダーシップ教育、ボランティア活動、そして会員だけに与えられる授業料の特別ディスカウントとあります。

会員になるためには、会費として95ドルを支払うことが必要ですが、これは1回限りのものであり、この組織が選んだ生徒のみに会員となる資格が与えられるとされています。では、どのようにしてこの組織は会員となる生徒を選抜するかですが、based on outstanding scholastic achievement and academic excellenceとあります。
しかしながら、どのくらいの成績の伸びを示した生徒あるいは、優秀な成績を取った生徒が選抜され、会員となるためのレターを送られるかというその具体的な基準については、一切述べられていません。
おそらく、学校側からこの組織あてに生徒を推薦するなど、この組織と世界の中等教育機関はなんらかの連携があるのかもしれません。

ノーベル関連の組織ですから、成績優秀で意欲に満ちていて奨学金を必要とする生徒を積極的に応援できる潤沢な資金を有しているのでしょう。この組織から選ばれた生徒は大きなチャンスを与えられたことになると思います。
このチャンス、英語圏の慣習ですが、自分で積極的に利用しないことには、機能しません。
組織と自分との関係を考えて、加入することで自分にどのようなメリットがあり、組織と付き合っていけるのかというイメージが明確でなければ、奨学金をいただけるわけがありません。

この組織はおそらく、入会を促すレターを送る相手を綿密に調査し、選別しているわけではないと思います。学校と連携して、奨学金を与える可能性を学業面から考えて、加入を促すレターを世界に発送していると思います。

日本人留学生として、この組織の会員となることは、「チャンスを生かす」という発想を、より具体的に考えるとても良い機会になるのではないかと思いますが、会員であることのみで、活動がなければあまり意味がないと思います。